8月10日(日)
昭和萬葉集(巻五)(158)(昭和十五年~十六年の作品)
講談社発行(昭和55年)
Ⅲ(6)
はてなき戦線(6)
戦場にて(2)
生井武司
包囲圏せばめて逢(あ)ひし他部隊に故郷を聞けり兵らも我も
小松北溟
敵前の陣地構築に疲れはて妻の夢さへみることもなし
村石波之助
日(け)ならべて霖雨(りんう)続けば背嚢(はいなう)も水筒皮も黴生
(かびは)えにけり
瓜生鉄雄
山の端(は)に赤き火星を信号燈と兵あやまてり今宵もまた
土山欣一
便衣隊(べんいたい)入り込める故燈(ひ)をかくせと足音あらく告げて行
く声
(つづき)