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Channel: 日々の気持ちを短歌に
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昭和萬葉集(巻九)(151)(昭和二十五年~二十六年の作品)

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昭和萬葉集(巻九)(151)(昭和二十五年~二十六年の作品)

講談社発行(昭和55年)                       

Ⅱ(44)

さまざまな仕事(24)

仕事の歌(4)

吉田隆雄

夜深く連絡さるる貨車のなか声たてず牛のよろめきてをり

梅田繁男


燈点(ひとも)してき汽罐の中に働けば心は安し人見ぬ一日

米沢ときお

額よりしたたる汗の沁む瞼拭きつつ妻とセメン練り合ふ

三浦春雄

一枚の足場に託す命にて父母の嘆きをふと思ひみる

午後の陽を照り返しつつバケットは索道(さくだう)に揺れ揺れ山越えて来
 
 
(つづく)


新古今和歌集巻第四(23) 秋歌上(23)

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1月18日(金)

新古今集(157)
                                                       
岩波文庫:佐佐木信綱校訂
 
新古今和歌集巻第四(23)
 
秋歌上(23)

          題しらず                従 三 位 頼 政

三百二十九  狩衣われとは摺らじ露しげき野原の萩のはなにまかせて

                                権 僧 正 永 縁

三百三十  秋萩を折らでは過ぎじ月くさの花ずりごろも露に濡るとも

   (つづく)

古今和歌集巻第十八(29) 雑 歌下(29)

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古今和歌集(484)

岩波文庫より

校注:佐伯梅友

古今和歌集巻第十八(29)

雑 歌下(29)
                                                  
九百八十九 風のうへにありかさだめぬ塵の身は ゆくへも知らずなりぬべ

らなり
    
風任せの塵みたいなわが身は、行く先もわからずじまいになってしまいそうだ。
 

    家を売りてよめる                      伊   勢

九百九十 あすか川ふちにもあらぬ我が宿も せに変り行く物にぞ有りける

あすか川の淵は瀬になるが、その淵でもないわが宿も、「せに」(銭)変ったとの嘆

き。

 
(つづく)
                  

明石海人歌集 白描(161) 作者の言葉(2)

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明石海人歌集

白描(161)

岩波文庫より

(注)明石海人(本名野田勝太郎)は、大正7年沼津町立沼津商業学校(現:県立

沼津商業高等学校)卒業で、私の先輩であることを知りました。

作者の言葉(2)

 第一部白猫は癩者としての生活感情を有りの儘に歌ったものです。けれども私の

歌心はまだ何か物足りないものを感じていました。あらゆる仮装をかなぐり捨てて赤

裸々な自我を思いの儘に跳躍させたい、こういう気持から生まれたものが第二部

で、概ね日本歌人誌に発表したものです。しかし、仔細に見れば此処にも現実の生

活の翳がさしていることは否むべくもありません。この二つの行き方は所詮一つに

帰すべきものなのでしょうが、私の未熟さはまだ其処に至っていません。第一部第

二部共に昭和十二年より十三年に至る作で、中には回想に拠ったものも少なくあり

ませんが、西郷さんの銅像の紙礫も縊れた病友の袷の縞目も、私にとっては今朝

の粥の味よりも鮮やかな現実です。

 この集の草稿の整理は、気管切開の手術を受けた前後を通じてなされたので意に

満たない点が少なく有りませんが、今は健康が赦されないので満身創痍の儘世に

送る外はありません。

(つづく)

後藤瑞義の短歌(280) 平成九年十月 遠花火(1)

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後藤瑞義の短歌(280)

「賀茂短歌」第42巻第5号(平成九年十月発行)

遠花火(1)

朝なさなわれの座席の真向いに座れる乙女今日は来たらず

牧水の愛でし千本松原はテトラポットに覆われている

閉されし電車の窓に逃れんと一匹の蛾が這い回りおり

麦秋の丘を登れり過ぎ去りしひとつの恋をこころにいだき

君詠みし真紅なせるエベレスト思い浮かべて眠らんとする

「内村鑑三書簡集」(岩波文庫)より 神を信ずるのみ

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「内村鑑三書簡集」(岩波文庫)より

(注)文語を口語に、わたしの意訳箇所もあります。

明治34年より          

神を信ずるのみ

わたしは、いかなる境遇になっても神様を信じるだけです。裕福になっても

貧乏になっても、成功しても失敗しても、徳を積むことが出来ても罪に陥る

ことになっても、世の中に受け入れられ迎えられても友に裏切られ捨てられ

ても、生きていても死んでしまっても、天国に昇っても地獄に落ちても、わ

たしはただただいちずに神様を信じるだけです。ですからわたしには未来の

展望はありません、過去の悔いもありません、悲しみ歎くこともなく、失望

することもなく、すべて今いまを生きるだけです。すべてのことは歓喜に変

り、わたしの生涯は信、望、愛が連続して循環し心は常によろこびに満ちあ

ふれます。


コロサイの信徒への手紙(12) 3.(2)キリストに結ばれて(5)

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聖書(新共同訳)
 
日本聖書協会(1994年)発行
 
新約聖書(642)
 
コロサイの信徒への手紙(12) 

3.(2)キリストに結ばれて(5)     
    
 5だから、地上的なもの、すなわち、みだらな行い、不潔な行い、情欲、悪い欲望、および貪欲を捨て去りなさい。貪欲は偶像礼拝にほかなりません。6これらのことのゆえに、神の怒りは不従順な者たちに下ります。7あなたがたも、以前このようなことの中にいたときには、それに従って歩んでいました。8今は、そのすべてを、すなわち、怒り、憤り、悪意、そしり、口から出る恥ずべき言葉を捨てなさい。9互にうそをついてはいけません。古い人をその行いと共に脱ぎ捨て、10造り主の姿に倣う新しい人を身に着け、日々新たにされて、真の知識に達するのです。11そこには、もはや、ギリシャ人とユダヤ人、割礼を受けた者と受けてない者、未開人、スキタイ人、奴隷、自由な身分の者の区別はありません。キリストがすべてであり、すべてのもののうちにおられるのです。

昭和萬葉集(巻九)(147)(昭和二十五年~二十六年作品 )

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昭和萬葉集(巻九)(147)(昭和二十五年~二十六年作品
 
講談社発行(昭和55年)

Ⅱ(45)

さまざまな仕事(25)                               

仕事の歌(5)

榎森智治

機雷流るる海峡過ぐれば袴岳の緑を仰ぐ眼鏡はづして

川口しかよ

梅雨いく日錆びつき早き庖丁を客なき時に丹念に磨く

うたたねの夢にも料理作りゐるわびしき暮し身につきたらし

渡辺たつ子

おばさんと呼ばるる事も身につきて癩院に吾の半生が過ぐ

杉原文子

病む夫とビタミン液を射ち合ひて外科療棟の夜勤に出でゆく

中野 保

特定局の夜のさむさを告ぐる声おみななるらし聞きの親しさ
 
(つづく)

 

新古今和歌集巻第四(24) 秋歌上(24)

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新古今集(163)
 
岩波文庫:佐佐木信綱校訂
 
新古今和歌集巻第四(24)
 
秋歌上(24)
                                   
         守覚法親王五十首歌よませ侍りけるに     顕昭法師

三百三十一 萩が花まそでにかけて高圓のをのへの宮に領巾(ひれ)ふるやたれ

         題しらず                  祐子内親王家紀伊

三百三十二 置く露もしづごころなく秋風にみだれて咲ける眞野の萩原

(つづく)

古今和歌集巻第十八(30) 雑 歌 下(30)

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古今和歌集

岩波文庫より

古今和歌集巻第十八(30)

雑 歌 下(30)  
 
筑紫(つくし)に侍りける時に、まかり通ひつゝ碁うちけ

る人のもとに、京にかへりまうできてつかはし

ける                     きのとものり
 
九百九十一 ふるさとは見しごともあらず  ( をの ) ( え )のくちし所ぞ恋しかりけ


 筑紫―九州北部地方。友則がなぜここにいたかは不明。初句:京をさして言った。

二句:以前のようでもない。三句、四句:あなたと碁をうった所がの意。仙境で仙人

の碁を打つのを見ていたら、斧の柄が朽ちたという中国の故事によっていう。

 
   女ともだちとものがたりして、別れてのちにつかはしける みちのく

九百九十二 あかざりし袖のなかにやいりにけん わが ( たましひ )のなき心地 ( ここち )する

  一句~三句:私の魂は、たんのうしないで別れたあなたの袖の中には

いってしまったのかしら。
 
 (つづく) 

                                                            

明石海人歌集 白描(162) 作者の言葉(3)

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明石海人歌集

白描(162)

岩波文庫より

(注)明石海人(本名野田勝太郎)は、大正7年沼津町立沼津商業学校(現:県立沼

津商業高等学校)卒業で、私の先輩であることを知りました。

作者の言葉(3)

 本書は、下村海南、山本実彦、両大人の御厚意と、本園々長光田健輔、医官内田

守人両先生の御尽力によって、世にでることになったもので、茲に謹んで謝意を表

す次第です。また、目の見えない上に声の出ない私を扶すけて、煩瑣な草稿の整理

に当たって呉れました病友、小田武夫、春日英郎、山口義郎三君の労苦にも深く御

礼を申し上げます。

 此の小文でもっと詳細に私の周囲を紹介したいと思いましたが、既にその労に堪

えないので、常に傍らにあって私の心身両面に慈しみの眼をもって護って下さる内

田国手に、跋文を御願いして補って頂くことにしました。

 では歌集白描を送ります。この一巻が救癩運動の上に、また我々癩者の生活の

上に何等かの意義を持ち得るなら、それは望外の幸です。 

      昭和十四年一月  長島愛生園にて 

                                          明石海人
 
                                    (つづく)

後藤瑞義の短歌(281) 平成九年十月

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後藤瑞義の短歌(281)

「賀茂短歌」第42巻第5号(平成九年十月発行)

遠花火(2)

鶴の群れ(くれない)そまるエレベスト越えつつあらむ声の切つなし

蝉時雨激しくなりぬ父さんの木工場に人ひとりいぬ

工事場は昼休みなりシート敷き皆木陰にて横になりおり

熱海城上空にして開きたる花火は錦が浦を染めたり

遠花火大き輪描き消えにけりしじま戻りてのちに音する

「内村鑑三書簡集」(岩波文庫)より 日本人とキリスト教

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「内村鑑三書簡集」(岩波文庫)より

(注)文語を口語に、わたしの意訳箇所もあります。

明治34年より          

日本人とキリスト教

もし日蓮に法華経でなく聖書を授けられたなら、かれはルーテルのようなキ

リスト教の改革者になったでしょう。もし馬琴がナザレのイエスの心を知る

ことが出来たなら、サッカレーまたはディケンズのような小説家になったで

しょう。日本人にラファエルのような画才がないわけではありません、ただ

彼のような崇高な理想がないだけです。日本人にイングランド教会を樹立し

たクロムウェルの義憤がないわけではありません、ただ、彼を導いた神の光

明が日本人に届いていないだけです。神様どうか日本人に人類の最高の光明

であるキリストを与えてください、そうすれば西欧人になんら遅れをとりま

せん。

コロサイの信徒への手紙(14) 3.(3)キリストに結ばれた生活(6)

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月20日(日)
       
聖書(新共同訳)
 
新約聖書(595)
 
コロサイの信徒への手紙(14)
 
3.(3)キリストに結ばれた生活(6)

 12あなたがたは神に選ばれ、聖なる者とされ、愛されているのですか

ら、憐れみの心、慈愛、謙遜、柔和、寛容を身に着けなさい。13互いに忍

び合い、責めるべきことがあっても、赦し合いなさい。主があなたがたを赦

してくださったように、あなたがたも同じようにしなさい。14これらすべ

てに加えて、愛を身に着けなさい。愛は、すべてを完成させるきずなです。

15また、キリストの平和があなたがたの心を支配するようにしなさい。こ

の平和にあずからせるために、あなたがたは招かれて一つの体とされたので

す。いつも感謝していなさい。16キリストの言葉があなたがたの内に豊か

に宿るようにしなさい。知恵を尽くして互いに教え、諭し合い、詩編と賛歌

と霊的な歌により、感謝して心から神をほめたたえなさい。17そして、何

を話すにせよ、行うにせよ、すべてを主イエスの名によって行い、イエスに

よって、父である神に感謝しなさい。

(つづく)
                                                                    

昭和萬葉集(巻九)(148)(昭和二十五年~二十六年の作品)

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昭和萬葉集(巻九)(148)(昭和二十五年~二十六年の作品)

講談社行(昭和55年)

Ⅱ(46)

さまざまな仕事(26)

仕事の歌(10)

杉井武治

ジェーン台風被害調査に水稲の病虫害を加算報告

持田勝穂

新聞紙と原稿用紙が散らばれる我のデスクにまた戻らばや

吉川善之助

鹿の鳴く午前三時に起き出でて又正倉院を守らむとす

加藤武司

胡頽子 (ぐみ)の花散りたまりたる水甕に呉須 ( ごす )によごれし手を洗ふなり

川合玉堂

指染めて皿に朱を溶き胡粉 ( ごふん )溶き紅溶くほどに心わかやぐ
 
(つづく)


新古今和歌集第四(25) 秋歌上(25)

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新古今集(169)
 
佐佐木信綱校訂

新古今和歌集第四(25)

秋歌上(25)
                                 人  麿

三百三十三  秋萩の咲き散る野辺の夕露に濡れつつ来ませ夜は更けぬとも

                               中納言家持

三百三十四  さを鹿の朝立つ野辺の秋萩に玉と見るまで置けるしらつゆ

 (つづく)        

古今和歌集巻第十八(31) 雑歌下(31)

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古今和歌集(487)

岩波文庫より      

校注:佐伯梅友

古今和歌集巻第十八(31)

雑歌下(31)
 
  寛平の御時に、唐土(もろこし)半官 ( ほうぐわん )にめされて侍りける

  時に、東宮のさぶらひにて、をのこども酒たう

  べけるついでによみ侍りける

                       ふぢはらのたゞふさ

九百九十三 なよ竹のよながきうへに 初霜のおきゐて物を思ふころかな

  唐土の半官―遣唐使の大使・副使に次ぐ官。
 
   題しらず

                                       よみ人しらず
                                                                                                                九百九十四 風ふけば沖つ白波たつた山 夜半にや君がひとりこゆらん
 
 ある人、この歌は「昔、大和の国なりける人の ( むすめ )に、ある人すみわたりけ

り。この ( おんな )、親もなくなりて、家もわるくなり行くあひだに、この男、河内

の国に人をあひしりて通ひつゝ、かれやうにのみなりゆけり。さりけれど

も、つらげなるけしきもみえで、河内へいくごとに、男の心のごとくにし

つゝいだしやりければ、あやしと思ひて、もしなきまに、 ( こと )心もやあるとう

たがひて、月のおもしろかりける夜、河内へいくまねにて、前栽 ( ぜんさい )のなかにか

くれて見ければ、夜ふくるまで、ことをかきならしつゝうちなげきて、この

歌をよみてねにければ、これをきゝうちなげきて、この歌をよみてねにけれ

ば、これをきゝ7て、それより、又外へもまからずなりにけり」となん言ひつ

たへたる
           
  初句、二句:立つといいかけた枕詞。三句~五句:竜田山をこの夜中にあの方が

ひとりで越えているだろうか。さぞさびしいことだろう。○すみわたりけり―夫として

ずっと過ごしていた。後文で見ると同棲していたと見える。○かれやうにのみ―この

女から離れてゆくかっこうばかり。○男の心のごとくに―男の欲するように。○もしな

きまに…ひょっと、自分のいない間に、他の男を引きいれでもするのかと疑って。

                                                                              
 (つづく)

明石海人歌集 白描(163) 白描以後

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明石海人歌集

白描(163)

岩波文庫より

(注)明石海人(本名野田勝太郎)は、大正7年沼津町立沼津商業学校(現:県立沼

津商業高等学校)卒業で、私の先輩であることを知りました。

白描以後

よろこび

   光田園長救癩四十年祝賀

日の本の癩者をまもる太柱いさをあまねし(よはひ)は芽出度し

   白猫献本式

癩者吾が命をかけし歌書をまづ園長(そのをさ)大人 ( うし )に捧げむ

   勅題 朝陽映島

白霜も茜さすべし東雲の鐘のひびきに島は凪ぎつつ
   
               (つづく)

後藤瑞義入選歌(NHK全国短歌大会)

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後藤瑞義入選歌(NHK全国短歌大会)

石くれのごとくなりたる野ぼとけにいまだほほえむおもかげのこる


(平成三十年度 NHK全国短歌大会 一月十九日    秀作   伊藤一彦 選)


飾り置く子育て地蔵の風車かぜのなければ息ふきてやる


(平成三十年度 NHK全国短歌大会 一月十九日     入選 )


後藤瑞義の短歌(282)  平成九年十二月

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1月21日(月)

後藤瑞義の短歌(282)

「賀茂短歌」第42巻第6号(平成九年十二月発行)

葛の花(1)

切岸を這い上り咲く葛のつる舗装路に伸び踏みしだかれる

盛り上り盛り上りくる力あり崩れる前の一瞬の波

ごみ漁る烏小枝に飛び退きて人過ぐと見るや舞いもどりたり

一面の休耕田の草むらにま昼をただに満つる虫の音

くろがねの南部風鈴響くなり仕舞い忘れし台風の夜半


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